映画『ファウンダーズデイ』とは?

“その一票”が、命を奪う──。
アメリカの小さな町で繰り広げられる町長選挙の裏で、人々が次々と何者かに殺されていく。『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は、選挙戦という民主主義の象徴が、恐怖と狂気に染まっていく異色のスラッシャーホラーです。
選挙という現実的な舞台設定と、マスク姿の殺人鬼による連続殺人事件が交錯することで、“恐怖のリアリティ”が一層引き立つ作品となっています。本記事では、この作品が持つ独自の魅力を掘り下げながら、ストーリー、テーマ、そして基本情報を紹介していきます。
“殺戮選挙”という異色のテーマ
『ファウンダーズデイ』の最大の特徴は、政治的な選挙戦とスラッシャーホラーという一見相容れない要素を融合させた点にあります。
本作では、町長の座を争う選挙戦が激化する中、謎のマスクを被った人物による凄惨な連続殺人事件が発生。人々の不安と不信感が爆発し、町全体がパニックと狂気に包まれていきます。
この“殺戮選挙”という構図は、現代社会における「正義」「民意」「集団心理」などの危うさを、恐ろしくも鋭く描き出しているのです。
あらすじ|小さな町を襲う連続殺人の恐怖
舞台はアメリカ・ニューイングランド地方のとある小さな町。現職町長ブレア・グラッドウェルと、挑戦者ハロルド・フォークナーによる選挙戦が激しく繰り広げられていた。
そんな中、町である女性がマスク姿の男に襲われる事件が発生。それを皮切りに、町では次々と不可解で残虐な殺人事件が起こり始める。
果たして犯人は誰なのか? 選挙戦との関係は? そして、この町が抱える“過去の闇”とは──?
作品概要・公開日・キャスト情報まとめ
- タイトル:ファウンダーズデイ/殺戮選挙(原題:Founders Day)
- 監督:エリック・ブルームクイスト
- キャスト:ナオミ・グレース、デビン・ドルイド、エイミー・ハーグリーブス ほか
- ジャンル:スラッシャーホラー、政治スリラー
- 上映時間:106分
- レイティング:R15+
- 製作年:2023年(アメリカ)
- 日本公開日:2024年9月20日
- 配給:プルーク、エクストリーム
- 公式サイト:https://www.founders-day.com/
なぜ“選挙×スラッシャー”がこんなにも恐ろしいのか?

『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』が他のスラッシャーホラーと一線を画す理由──それは、舞台が“町長選挙”という極めて現実的かつ身近な政治イベントである点にあります。
民主主義の根幹とも言える「選挙」を、恐怖と混乱、そして死が支配する空間として描いた本作は、単なる娯楽を超えて観客の倫理観や社会意識に鋭く突き刺さります。
ここでは、この映画がなぜ“選挙×スラッシャー”という組み合わせで強烈な恐怖を生み出しているのかを、3つの視点から読み解いていきます。
マスクの殺人鬼が象徴する“民主主義の影”
本作に登場するマスク姿の殺人鬼は、単なる狂人ではありません。
匿名性・扇動・陰謀──選挙という制度に内在する“民主主義の影”を体現するかのように、誰もが正体を知らないままに恐怖を拡散していきます。
“民意”という言葉の裏で動く感情と暴力、正体不明の正義。それらを象徴する存在としての殺人鬼は、選挙という場に潜む深い闇を浮かび上がらせています。
疑心と暴力に満ちた投票戦──町民たちの狂気
平和だった町は、選挙と殺人を機に一気に崩壊していきます。
誰もが「犯人かもしれない」、誰もが「疑われるかもしれない」。そんな不信と恐怖が連鎖し、理性を失った人々の狂気が暴走し始めるのです。
この構造は、選挙が時に「分断」や「対立」を生む現実社会ともリンクし、観客に“他人事ではない不安”を突きつけてきます。
「政治ホラー」という新ジャンルの可能性
『ファウンダーズデイ』は、選挙という政治的テーマと、スラッシャーというホラー要素を融合させた極めて珍しい作品です。
これは単なるジャンルの組み合わせにとどまらず、「制度がもたらす恐怖」や「集団の心理操作」といった深いテーマを映像化する“政治ホラー”という新しい潮流の萌芽でもあります。
社会構造そのものをホラーとして描くこのアプローチは、今後のホラー映画の可能性を大きく広げる試金石と言えるでしょう。
見どころ解説|『ファウンダーズデイ』の注目ポイント

『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は、ただのスラッシャーホラーでは終わりません。選挙という舞台設定を巧みに使い、物語に緊張感と複雑な構造を与えています。
政治的な思惑、疑心暗鬼、そして個人の選択が死に直結する恐怖。観客は常に“次に何が起きるのか”を考えながら、選挙戦の行方と殺人事件の真相を追い続けることになります。
ここでは、本作の“見逃せない注目ポイント”を3つに絞ってご紹介します。
緻密な伏線とサスペンス演出の妙
『ファウンダーズデイ』は、冒頭からエンディングに至るまで多くの伏線を丁寧に配置しています。些細な台詞や仕草が、後の展開に大きく影響するため、一瞬たりとも目が離せません。
また、誰が犯人なのか分からない緊張感と、町全体を覆う不穏な空気が見事に演出されており、まるで観客自身が“この選挙戦の中にいる”かのような没入感を与えてくれます。
投票行動が“生死”を分ける構図
本作の最大の仕掛けとも言えるのが、投票行動そのものが物語の“鍵”になるという点です。
登場人物たちはそれぞれの立場や感情に基づいて投票しようとしますが、それが結果的に彼らの運命を決定づけていきます。選挙という民主的手段が、恐怖と死を引き寄せるトリガーになるというアイデアは斬新で、現代社会に対する鋭い風刺にもなっています。
予想を裏切るラストに戦慄
物語の終盤には、観客の予想を覆す“ある真実”が明かされます。それまで積み上げてきた情報や伏線が一気に収束し、衝撃と納得、そして絶望感が押し寄せてきます。
このラストは単なる驚きにとどまらず、「この物語は一体何を描こうとしていたのか?」という深い問いを観る者に投げかけてきます。エンタメ性とメッセージ性が見事に交差する、非常に完成度の高いクライマックスです。
監督エリック・ブルームクイストの魅力とは?

『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』を手がけたのは、映画監督だけでなく脚本家・俳優としても活動するマルチクリエイター、エリック・ブルームクイスト。
彼の作品には、ただ怖がらせるだけではない“意義ある恐怖”が込められています。青春、社会、そして人間の心理を織り交ぜた作風は、観る者に強烈なインパクトと問いを残します。
ここでは、そんなブルームクイスト監督の魅力を2つの視点から掘り下げていきます。
ホラー×ティーン×社会派の独自作風
ブルームクイスト監督の特徴は、ホラーの中に“ティーン世代の葛藤”や“社会的テーマ”を巧みに取り入れることにあります。
例えば、青春ドラマのような雰囲気の中に突然訪れる恐怖。登場人物たちが直面するのは怪物や殺人鬼だけではなく、差別や分断、情報操作といった現実社会の影です。
『ファウンダーズデイ』でも、若者たちが選挙という制度の中で揺れ動きながら、それぞれの正義と向き合っていく姿が印象的に描かれています。
過去作から見る『ファウンダーズデイ』との共通点と進化
ブルームクイスト監督は、これまでに『NIGHT AT THE EAGLE INN』や『TEN MINUTES TO MIDNIGHT』など、ジャンルを越えた作品で注目を集めてきました。
彼の過去作に共通しているのは、“狭い世界で起きる緊張感”と“終盤に向けての急展開”。これは『ファウンダーズデイ』にも脈々と受け継がれており、むしろその集大成とも言える構成になっています。
さらに本作では、映像美や編集のテンポにも磨きがかかり、エンタメ性とメッセージ性のバランスが格段に向上。ブルームクイスト監督の“進化”を実感できる一作です。
観る前に押さえておきたい!こんな人におすすめ

『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は、単なるスラッシャーホラーにとどまらず、政治や社会の深層を描き出す異色作です。
そのため、ホラー好きだけでなく、社会の構造や人間心理に興味がある方にも強く刺さる作品となっています。
ここでは、この映画を特におすすめしたい3タイプの観客層を紹介します。
スラッシャー映画が好きな人
『ハロウィン』や『スクリーム』といったスラッシャー映画が好きな方にとって、『ファウンダーズデイ』は間違いなく満足できる一作です。
マスクをかぶった殺人鬼、張り詰めた空気、予測不能な展開──スラッシャーならではの醍醐味がしっかり詰まっています。
社会派サスペンスに興味がある人
政治、情報操作、集団心理といった社会的テーマに関心がある方にとって、本作は“考えるホラー”として強く心に残るはずです。
物語の背景にあるのは、単なる恐怖ではなく、“正義とは何か?”という根源的な問い。その視点から観ると、映画の深みが倍増します。
“選挙の裏側”に恐怖を感じたことがある人へ
選挙がもたらす人間関係のひずみや、操作された情報に不安を感じたことがある方には、本作の恐怖がリアルに響くでしょう。
投票という行為が命の危険と直結する──そんな極端な状況を通して、「自分の選択とは何か?」を見つめ直すきっかけにもなるはずです。
まとめ|『ファウンダーズデイ』が突きつける“命がけの選択”

『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は、ただのホラー映画では終わりません。
この作品が観客に突きつけるのは、「あなたはどちらを選ぶのか?」という命がけの問い。
投票所という日常的な空間が恐怖の舞台へと変貌し、誰もが“加害者”にも“被害者”にもなり得る社会の危うさが描かれています。
ここでは、本作が私たちに問いかけてくる2つのメッセージを振り返ってみましょう。
恐怖は“投票所”から始まる
多くのホラー作品では、恐怖の始まりは森や廃墟、夜道などの“非日常”にあります。しかし『ファウンダーズデイ』は違います。
始まりの舞台は、誰もが訪れる“投票所”。そこは本来、安全で平等であるべき場所。にもかかわらず、作品内では不信と暴力が交錯する“恐怖の発信源”へと変わっていきます。
それはつまり、私たちの日常のすぐ隣に、恐怖が潜んでいることを象徴しているのです。
“あなたの一票”が狂気を引き寄せるかもしれない…
映画の根幹にあるのは、「選択」の重さ。どちらの候補を選ぶか──その一票が、他人の、あるいは自分の命に直結するかもしれない。
『ファウンダーズデイ』は、民主主義の象徴である投票という行為すらも、狂気と暴力の導火線となり得ることを描いています。
“正しさ”とは何か。“民意”とは本当に平等なのか。観終わったあとに、静かに心に問いかけられる感覚が残ることでしょう。
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