『SAW6』とは?シリーズの位置づけと基本情報
『SAW6』の基本情報
- 原題:SAW VI
- 公開年:2009年
- 監督:ケヴィン・グルタート(シリーズ編集を担当してきた実力派)
- 脚本:パトリック・メルトン & マーカス・ダンスタン
- ジャンル:スプラッターホラー、サスペンス
- 日本でのレーティング:R15+(過激な描写が含まれるため)
- 前作とのつながり:『SAW5』のラストから直接続くストーリー
シリーズの位置づけ:『SAW6』は何が特別か?
『SAW6』は、ジグソウ(ジョン・クレイマー)の死後、彼の遺志を継ぐ者たちの暗躍が本格化する転換点となる作品。これまでのシリーズとは異なり、単なる殺人ゲームではなく、保険会社の欺瞞や医療制度への批判といった社会的なテーマを色濃く反映したストーリーが展開されている。
シリーズの大きな流れの中での『SAW6』の役割
| 作品 | 主な展開 | 物語の進行 |
|---|---|---|
| SAW(2004) | ジグソウの登場、猟奇ゲームの始まり | ジグソウの理念が明らかに |
| SAW2(2005) | 罠の大規模化、アマンダが弟子であることが判明 | ゲームの裏側が見えてくる |
| SAW3(2006) | ジグソウの死、アマンダの暴走 | ここでジョン・クレイマーが死亡 |
| SAW4(2007) | ホフマンがジグソウの後継者として台頭 | 二重進行のストーリー展開 |
| SAW5(2008) | ホフマンの策略が明確になり、FBIが迫る | ストラム捜査官の死 |
| SAW6(2009) | 保険業界への批判、ホフマンの追い詰められた立場 | ついにジル・タックが動き出す |
| SAW7(2010) | 物語のクライマックス、ジグソウのもう一人の弟子の登場 | シリーズの一つの完結 |
『SAW6』の特徴
- ホフマン vs. FBI:ジグソウの後継者として暗躍するホフマンが、FBIから本格的にマークされ始める。
- ゲーム参加者の社会的な背景:今回は特に医療保険業界の腐敗をテーマにしており、「誰を生かし、誰を見捨てるか」という問題がゲームの中で問われる。
- ジル・タックの動き:ジョン・クレイマーの元妻であるジルが、ついに彼の遺言に従い行動を起こす。
『SAW6』は、単なるスプラッター映画にとどまらず、社会批判的な視点を取り入れたことで、シリーズの中でも特異な立ち位置にある作品といえる。
『SAW6』のストーリーを簡単に解説(ネタバレあり)
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『SAW6』は、前作『SAW5』のラストから直接続く形で物語が展開される。ジグソウ(ジョン・クレイマー)が死亡した後も、彼のゲームは継続され、新たな試練が始まる。
① オープニング:過激な「身を削るゲーム」
物語は、薄暗い廃墟の一室で目を覚ます二人の悪徳高利貸し業者、シモーネとエディから始まる。
- 二人は「自分の体の一部を犠牲にし、より多くの肉を削ぎ落とした方が生き残る」という過酷なゲームに巻き込まれる。
- シモーネは自らの腕を切り落として生存するが、エディは敗北し死亡。
- これまでのシリーズと同様、「命の大切さ」を試すジグソウのゲームで幕を開ける。
② ホフマンの暗躍とFBIの捜査
前作でストラム捜査官を罠にはめて殺害したホフマン刑事は、ジグソウの後継者として影でゲームを仕掛けている。
- FBIはストラムをジグソウの共犯者だと考えているが、彼の上司だったエリクソン捜査官とペレーズ捜査官は、ホフマンに疑念を抱き始める。
- ホフマンはFBIの目を欺きつつ、ジグソウの遺志を継ぎ、次なるゲームを開始する。
③ 新たなターゲット:ウィリアム・イーストンの試練
アンブレラ保険会社の副社長であるウィリアム・イーストンは、ビジネス上の理由でジョン・クレイマー(ジグソウ)の保険請求を却下した過去を持つ。
- 彼の基準は、「生存率の高い患者には保険を適用するが、リスクが高い患者は見捨てる」というものだった。
- その冷酷な選別システムが、今回のゲームのテーマとなる。
→ 彼は拉致され、目を覚ますとジグソウのゲームに巻き込まれていた。
④ ウィリアムの生死を賭けたゲーム(全4ステージ)
ジグソウはウィリアムに、彼の保険審査基準を試す過酷なゲームを仕掛ける。
- 呼吸レースの試練
- ウィリアムと彼の部下のハンク(心臓病を持つ老人)が酸素マスクをつけた状態で対決する。
- 早く呼吸した方が窒息死するルールで、ウィリアムは勝利しハンクは死亡。
- → これは健康状態によって人を選別する彼の基準を皮肉ったゲームだった。
- 法務責任者 vs. 自分の秘書
- ウィリアムは自分の会社の法務責任者デビーと、秘書アディのどちらを生かすか選ばされる。
- 結果、彼はアディを救い、デビーは死亡。
- → これは利益を守るために冷酷な選択をしてきたウィリアム自身への罰だった。
- 6人の部下のうち2人を選んで助ける試練
- ウィリアムは、6人の部下のうち、2人しか救えない状況に追い込まれる。
- 最終的に、長年支えてくれた者を優先し、4人が死亡。
- → 企業のトップとして、誰を生かすかを選んできたウィリアムが、自らの価値観を問われる試練だった。
- 最終選択:ウィリアムの運命
- 彼の運命は、病気で保険を適用されなかった患者の遺族(タラとブレンド)に委ねられる。
- タラは復讐するか迷うが、息子のブレンドがレバーを引き、ウィリアムは酸で焼かれて死亡。
- → ここで示されたのは、ジグソウの考えと、被害者家族の選択が交差する結末だった。
⑤ ホフマンの暴かれる正体とFBIの反撃
ウィリアムのゲームが進行する一方で、FBI捜査官エリクソンとペレーズがホフマンの正体に気づく。
- しかし、ホフマンは彼らを逆に罠にはめ、エリクソンとペレーズを殺害。
- ついにFBIの目を欺くことに成功し、彼は完全なジグソウの後継者として君臨する。
⑥ 衝撃のラスト:ジル・タックの決断
ジョン・クレイマーの元妻であるジル・タックは、夫の遺言に従い、ある”装置”をホフマンに仕掛ける。
- 彼女が持っていたのは、「逆トラバサミ」と呼ばれる、かつてアマンダが使用された装置。
- ホフマンはこの罠にはめられ、ついに自らがゲームの犠牲者となる。
- しかし、ラストシーンでホフマンは自力で脱出し、次作『SAW7』へと続く。
『SAW6』のストーリーまとめ
- ジグソウの遺志を受け継ぐホフマンが、保険業界をターゲットにした新たなゲームを展開。
- 保険会社副社長ウィリアム・イーストンが、自らの選別基準を試されるゲームに巻き込まれる。
- 最終的に、病気で見捨てられた患者の家族がウィリアムの運命を決定。
- ホフマンの正体が暴かれるが、彼はFBIを逆に殺害し、完全な後継者となる。
- しかし、ジル・タックによってホフマンは罠にかけられ、衝撃のラストへ…!
『SAW6』は、シリーズの中でも社会的なテーマが強く、ただのスプラッターホラーではない奥深いストーリーが魅力的な作品といえる。
『SAW6』に込められた社会風刺:保険業界への批判

『SAW6』は、シリーズの中でも特に社会風刺の色が強い作品として知られている。ジグソウのゲームは、単なる拷問や殺戮ではなく、社会の歪みや倫理的問題を浮き彫りにする仕組みとして機能しているが、本作ではそのターゲットが保険業界の不条理さに向けられている。
① 物語に登場する「保険審査システム」の問題点
本作でゲームの中心人物となるのは、アンブレラ保険会社の副社長ウィリアム・イーストンである。彼は、「顧客の命の価値を統計データで計算し、生存率の低い人間には保険を適用しない」というシステムを導入していた。
これは、現実の保険会社が支払いリスクを減らすために保険金支給の審査を厳しくするという問題を反映している。
- ウィリアムの方針:「統計的に生存率の低い患者に保険を適用すると損失が増える。だから、そういう患者には支給しない」
- ジグソウ(ジョン・クレイマー)の過去:彼自身も末期がんと診断され、治療を受けるための保険を求めたが、ウィリアムのシステムによって却下された
- ゲームの目的:ウィリアム自身が「命の選別をする立場」から「選別される立場」に立たされる
この構造は、現実世界の医療保険制度への批判として明確であり、特にアメリカの民間医療保険制度の欠陥を鋭く指摘している。
② アメリカの医療保険問題と『SAW6』の関係
『SAW6』が公開された2009年は、アメリカの医療保険改革が激しく議論されていた時期である。
当時、オバマ政権が推進していた「オバマケア(Affordable Care Act)」は、すべての国民が適切な医療を受けられるようにすることを目的としていたが、多くの保険会社や共和党議員からの反発を受けていた。
『SAW6』が問題提起する保険業界の闇
- 選別主義:「病気になるリスクが高い人ほど保険に入れない」という矛盾
- 営利主義:「医療保険はビジネスであり、儲からない契約は成立しない」
- 弱者切り捨て:「お金がなければ命も救えない」という資本主義の冷酷さ
映画の中でウィリアムが「生存率を統計的に判断して契約を決めるのは合理的だ」と主張する場面は、アメリカの保険会社の現実を強烈に皮肉っている。
③ ウィリアム・イーストンのゲーム:彼は何を学んだのか?
ウィリアムは、ゲームの中で次のような試練を与えられる。
それらはすべて、彼が日常的に行ってきた「生存率の計算」に対する報いとなっている。
(1) 呼吸レース:健康体 vs. 病弱な老人
→ 体力のある者が生き残る構造を皮肉
(2) 部下2人のどちらかを選んで生かす試練
→ 「選別」することの苦しみを自ら体験させる
(3) 6人の部下のうち2人しか救えない試練
→ 利益優先の会社経営と同じ決断を迫られる
(4) 自分の命が他者の選択によって決まる最終試練
→ これまで自分が他人の生死を決めてきたことを逆の立場で味わう
最終的に、彼の運命はかつて保険適用を拒否された患者の遺族に委ねられ、復讐のために命を奪われる。
これは、「経済論理だけで人の命を選別することは、いつか自分にも返ってくる」というメッセージを強く印象付ける。
④ ジグソウの哲学 vs. 現実社会の倫理観
ジグソウのゲームは過激で非人道的だが、その裏には常に「生きることの価値」を問いかけるメッセージが込められている。
『SAW6』では、特に次のような問いを投げかけている。
- 「人の生死を決める権利は誰にあるのか?」
→ 保険会社のビジネスモデルが、実質的にこの権利を持ってしまっている。 - 「弱者は常に切り捨てられるべきなのか?」
→ 資本主義のルールでは、生き残るためには「強者であること」が求められる。 - 「利益と倫理のバランスはどこにあるのか?」
→ 保険会社は営利目的の企業であり、慈善団体ではない。しかし、その決断が命に関わるとき、どうあるべきか?
ジグソウは「人の生死を決める立場にあった者」を標的にし、彼らに「もし自分がその立場だったら?」と問う。
これは、観客にも「社会のシステムそのものに疑問を持て」というメッセージを投げかけているのではないだろうか。
⑤ 『SAW6』は単なるスプラッター映画ではない
『SAW6』は、シリーズの中でも特に社会的メッセージが強い作品であり、単なる残虐なホラー映画ではなく、現実の問題を風刺した作品として評価されている。
✅ 医療保険制度の問題をリアルに描いている
✅ ジグソウのゲームが、社会の歪みを浮き彫りにする
✅ ウィリアムの選択が、資本主義の倫理観を試す仕組みになっている
『SAW6』が問いかけたテーマは、現在の社会でも依然として議論されている。
この作品を通じて、単なる恐怖だけでなく、私たちが生きる現実についても考えさせられるのではないだろうか。
ジグソウの哲学と『SAW6』の深いテーマ

『SAW』シリーズを通して、ジグソウ(ジョン・クレイマー)は単なる殺人鬼ではなく、生存の価値と人間の選択を問いかける存在として描かれている。
特に『SAW6』では、彼の哲学がより明確に表現され、社会問題と絡めながら観客に強烈なメッセージを残している。
① ジグソウの哲学:「人は生きる価値を証明しなければならない」
ジグソウの信念の根底には、「人は生きる価値を自ら証明しなければならない」という考えがある。
彼は自身が末期がんを宣告されたことをきっかけに、「生を無駄にする者」に対して強い憤りを抱くようになった。
彼のゲームの目的は、単なる殺戮ではなく、「試練を与え、生きることの意味を自覚させる」ことにある。
つまり、ジグソウのゲームに勝ち残ることは、彼にとって「生きる資格がある」と認められることを意味する。
✅ 罰ではなく、試練:「ゲームに勝てば、生き方を改める機会を得る」
✅ 死は回避可能:「選択肢は常に与えられており、自分の意志で生き残る道を選べる」
✅ 人間の本質を試す:「命をかけた極限状態でこそ、人間の本性があらわになる」
② 『SAW6』におけるジグソウの哲学の具現化
『SAW6』では、ジグソウの哲学が特に強く表現されている。
その象徴的な存在が、保険会社の副社長ウィリアム・イーストンである。
ウィリアムは「統計的に生存率の低い人間には保険を適用しない」という冷徹な判断基準を持ち、
多くの患者を「数字」で選別してきた。
ジグソウ vs. ウィリアムの対比
| ジグソウの哲学 | ウィリアムの思想 |
|---|---|
| 人生は選択の連続であり、自分の行動次第で未来は変えられる | 生命は統計的に評価でき、合理的に選別すべき |
| 苦しみを乗り越えた者だけが本当に生きる価値を知る | 企業として、最も利益をもたらす選択をすべき |
| 個人の意思と努力によって運命は変えられる | 人の生死は計算可能であり、選別は避けられない |
この対比こそが、『SAW6』の核心テーマの一つであり、
ジグソウはウィリアムに「選ばれる側の苦しみ」を経験させることで、
「選別することの意味」を理解させようとする。
③ 過去のシリーズとの関連:「正義」か「狂気」か?
ジグソウの哲学は一貫しているものの、その解釈は観る者によって異なる。
- 『SAW1〜3』:哲学の純粋な形
→ ジグソウは「生きることの価値を自覚させる」ためにゲームを設計
→ しかし、アマンダが暴走し、ゲームが純粋な拷問へと変質 - 『SAW4〜6』:後継者問題
→ ホフマンがジグソウの意志を継ぐが、彼の目的は復讐と権力の維持
→ ジグソウの「試練の場」としてのゲームが、徐々に「制裁の場」に変化
『SAW6』では、「ジグソウの思想を正しく理解し、彼の意志を受け継ぐ者はいるのか?」 というテーマも描かれている。
④ 『SAW6』のゲームに込められた深いメッセージ
『SAW6』では、過去の作品と比べても特に強い社会的メッセージが込められている。
- 医療制度の不平等
- ウィリアムのゲームは、現実の保険制度の不公平さを風刺している
- 「生存率で人を選別する」という企業の論理は、果たして正しいのか?
- 「選択の自由」とは何か?
- ウィリアム自身も、これまでの人生で他人の命を選んできた
- しかし、ゲームの中では彼が「選ばれる側」となる
- 「選択を与える」というジグソウの理念が、皮肉な形でウィリアムに適用される
- 人間の本質を暴く試練
- ウィリアムは「選別の合理性」を信じていたが、ゲームの中で「感情」を知る
- 彼が最終的に救済されるかどうかは、「選別された側」の判断に委ねられる
⑤ 『SAW6』が伝えたかったメッセージとは?
『SAW6』は、シリーズの中でも最も明確に社会的メッセージを打ち出した作品である。
✔ 医療制度や資本主義への批判
✔ 選択の自由とその責任の重さ
✔ ジグソウの哲学の真意と後継者問題
ジグソウは「人間は極限の状況でこそ、自分の本質を理解する」と考えている。
この作品では、それが「他者を選別する立場」から「選ばれる立場」へと立場が逆転することで描かれている。
結論:『SAW6』はシリーズの中でも最も「思想的」な作品
『SAW6』は、単なるスプラッターホラーではなく、
「生きるとは何か? 選択の責任とは? 社会の仕組みは本当に公平か?」
といった深いテーマを内包した作品である。
ジグソウの哲学は、ただの狂気ではなく、
「現実社会の理不尽さに対する、歪んだ正義の形」とも言えるのではないだろうか?
『SAW6』のトラップとゲームの特徴(過去作品との比較)
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『SAW6』はシリーズの中でも特に社会風刺を込めたゲームが多く登場する作品であり、ジグソウ(ジョン・クレイマー)の哲学がより明確に反映されたトラップが用意されている。
ここでは、本作のトラップの特徴を詳しく解説し、過去作品と比較しながらその違いを見ていく。
① 『SAW6』のトラップの特徴
『SAW6』のトラップは、過去作と比較して以下の点が特徴的である。
- 社会的なテーマを持つ
- 今回のゲームは、単なる個人の罪に対する裁きではなく、保険業界や医療制度の倫理観を問うものが多い。
- 特に、ウィリアム・イーストンの試練は、保険会社が「誰を生かし、誰を見捨てるか」を決める現実の問題を反映している。
- 心理的な苦痛を重視
- 物理的な拷問だけでなく、他者の生死を選ぶ決断を強いられるゲームが多い。
- これは、過去作のような「単なるサバイバルゲーム」とは異なり、道徳的な選択が求められるものが多い。
- ゲームの進行が連続している
- ウィリアムの試練は一連の流れとして進行し、選択が次のステージに影響するようになっている。
- これは『SAW3』のジェフのゲームと似た構造を持つが、より社会的なメッセージが強調されている。
② 『SAW6』に登場する主要なトラップ一覧
以下に、『SAW6』で登場する代表的なトラップを解説する。
1. 身を削るゲーム(The Pound of Flesh Trap)
登場人物:シモーネ、エディ(高利貸し)
ルール:
- 参加者は「自らの肉体の一部を削り、より多くの肉を差し出した方が生き残る」
- 時間制限があり、より多くの肉を削ぎ落とした方が勝ち
結果:
- エディは脂肪を削ぎ落とそうとするが、間に合わず死亡
- シモーネは腕を切り落として生存
特徴:
- 自らの身体を犠牲にすることで生存できるルールは『SAW3』の「手の骨折りトラップ」や『SAW5』の「血の試練」を彷彿とさせる。
- ただし、このトラップは保険会社の「リスクを負えない者は切り捨てる」システムの象徴としても機能している。
2. 呼吸レース(The Oxygen Crusher)
登場人物:ウィリアム・イーストン、ハンク(病弱な老人)
ルール:
- 参加者はマスクを着用し、呼吸するたびに胸部を圧迫される
- 息を長く止められた方が生存する
結果:
- 健康なウィリアムが勝利、ハンクは死亡
特徴:
- ウィリアムの保険会社が「病気の人を見捨てるシステム」を作っていたことを皮肉る形になっている。
- 過去作の「肉体的に耐え抜くトラップ」とは異なり、「呼吸=生命の根本的要素を試す」というユニークな形式。
3. 犠牲の天秤(The Shotgun Carousel)
登場人物:ウィリアムの部下6人
ルール:
- ウィリアムは、6人の部下のうち2人だけを救い、4人を殺さなければならない
- 1人を救うには手に大きな釘を刺し込む必要がある
結果:
- ウィリアムは2人を救い、4人が死亡
特徴:
- 「企業がコスト削減のために誰をリストラするか決める状況」を皮肉っている。
- 『SAW5』の「電気チェーンゲーム」や「血の試練」と似た要素を持つが、今回はウィリアムが選択権を持つ点が大きな違い。
4. 最後の審判(The Acid Trap)
登場人物:ウィリアム・イーストン、タラ & ブレンド(保険適用を拒否された患者の遺族)
ルール:
- ウィリアムの生死は、彼の判断で保険適用を拒否された遺族が決める
- 彼らがレバーを引けば、ウィリアムは酸によって焼かれて死亡する
結果:
- タラは躊躇するが、息子ブレンドがレバーを引き、ウィリアムは死亡
特徴:
- ジグソウのゲームでは珍しく、ウィリアム自身ではなく第三者が彼の運命を決める構造になっている。
- 『SAW3』の「復讐するかどうかを試すゲーム」に近いが、今回は「システムが生死を決める」という企業批判が強調されている。
③ 過去作品のトラップとの比較
| 作品 | トラップの特徴 | 代表的なトラップ |
|---|---|---|
| SAW(2004) | 限られた空間での極限状況 | 逆トラバサミ、バスルームのゲーム |
| SAW2(2005) | 一軒家全体でのゲーム、多人数参加 | 針の部屋、死の迷宮 |
| SAW3(2006) | 個人の選択と許しがテーマ | 手の骨折りトラップ、アイスルーム |
| SAW4(2007) | ジグソウの過去と復讐のテーマ | 頭の粉砕装置、顔のアイスブロック |
| SAW5(2008) | チームワークを試すトラップ | 電気チェーン、血の試練 |
| SAW6(2009) | 社会風刺と道徳的な選択 | 呼吸レース、犠牲の天秤 |
④ 『SAW6』のトラップが示すメッセージ
- 生き残るのに必要なのは体力ではなく「倫理観」
- 企業の選択が「死の選別」につながる現実
- ジグソウのゲームが、社会の縮図として機能する
結論:『SAW6』のトラップはシリーズの中でも異色
『SAW6』のトラップは、単なる拷問ではなく、社会の問題を可視化する装置として機能している。
そのため、シリーズの中でも特に「考えさせられる」作品として評価されることが多い。
ジグソウのゲームが、もはや個人の罰ではなく、社会全体へのメッセージとなった瞬間、それが『SAW6』なのだ。
ホフマン vs. FBI:ジグソウの後継者争い

『SAW6』では、ジグソウの後継者争いが本格的に描かれる。
前作『SAW5』でホフマン刑事はFBI捜査官ストラムを罠にはめ、ジグソウの後継者と誤認させることに成功した。
しかし、ジグソウの遺志を継ぐ存在として、彼の計画は徐々に崩れ始める。
本作では、FBIの追跡、ジル・タックの動向、ホフマンの冷徹な手腕が交錯し、シリーズ屈指の心理戦が展開される。
① ホフマンの策略:完璧なジグソウの後継者か?
マーク・ホフマンは『SAW3』から登場し、『SAW4』以降はジグソウの後継者として暗躍する。
しかし、彼はジグソウの哲学とは異なり、私怨と自己保身によって動く殺人者である。
ホフマンの特徴
✅ 計画的な性格:ストラムを罠にかけ、完全犯罪を成功させる
✅ 冷酷な手法:ジグソウの「選択を与えるゲーム」ではなく、逃げ場のない殺人に近い手口
✅ 権力を利用する:刑事という立場を利用し、FBIの追跡をかいくぐる
しかし、『SAW6』では彼の計画に綻びが生じ始める。
② FBIの捜査が動き出す
ストラム死亡後、FBIのエリクソン捜査官とペレーズ捜査官がホフマンに疑いの目を向ける。
- エリクソンはストラムを疑っていたが、ジグソウの事件に不審点を見つける
- ペレーズは『SAW4』で負傷し、死亡したと思われていたが、実は生存していた
- 二人はホフマンに協力を求めるふりをしながら、慎重に彼を追い詰めていく
最終的に、彼らはホフマンが音声分析でストラムになりすました偽装工作を行っていたことを突き止める。
③ ジル・タックの決断
ジョン・クレイマーの元妻であるジル・タックは、これまで影から彼の計画を支えていたが、ついに決断を下す。
ジルの役割
- ジョンから受け取った遺品の箱の中には、ホフマンに関する重要な指示があった
- 彼女はジョンの最終計画を実行するため、ホフマンを罠にかけることを決意する
- その鍵となるのが「逆トラバサミ」トラップである
ジルはホフマンを気絶させ、彼の頭にジグソウの象徴ともいえる逆トラバサミを装着する。
これは、かつてアマンダ・ヤングが使用されたものと同じ装置であり、ジグソウの後継者としての試練を意味している。
④ ホフマンの最後の戦い
ホフマンは一瞬の隙を突いてジルから脱出しようとするが、彼女は装置を起動し、部屋を後にする。
- 逆トラバサミは通常、頭部を引き裂く構造になっており、ホフマンに絶体絶命の危機が訪れる。
- しかし、彼は驚異的な執念で装置を外そうと試みる。
- ついにホフマンは自らの顔を負傷しながらも、装置の破壊に成功し、生き延びる。
ここで『SAW6』は幕を閉じ、次作『SAW7(ファイナル)』へと続くことになる。
⑤ 『SAW6』の後継者争いが示すもの
『SAW6』では、ジグソウの理念が変質していく様子が顕著に描かれている。
| キャラクター | ジグソウの哲学との関係 | 『SAW6』での立場 |
|---|---|---|
| ジョン・クレイマー(ジグソウ) | 生きる価値を試すゲームを仕掛ける | 彼の遺志はまだ続いている |
| マーク・ホフマン | 自己保身と復讐のためにゲームを悪用 | FBIに追い詰められ、ジルに罠を仕掛けられる |
| ジル・タック | ジグソウの遺言を実行する | 最終的にホフマンを処刑しようとする |
| FBI(エリクソン & ペレーズ) | 事件の真相を暴こうとする | ホフマンを追い詰めるが殺害される |
『SAW6』は、ジグソウの後継者争いが単なる殺人ゲームではなく、権力と復讐が絡み合う複雑な心理戦になっている点が大きな魅力だ。
⑥ 『SAW6』の後継者争いが意味すること
- ジグソウの理念の変質
- 彼の哲学は、もはや純粋な試練ではなく、権力争いの道具になってしまった。
- ホフマンは、ジグソウの思想を利用しつつも、「正義」ではなく「自分の生存」のためにゲームを続けている。
- ホフマンの敗北と執念
- 『SAW6』のラストで、彼はついに追い詰められ、ジル・タックによって罠にかけられる。
- しかし、それでも生き延びることで、彼の執念が描かれている。
- ジル・タックの最終決断
- 彼女は夫・ジョンの遺志を実行するため、ホフマンを罠にかける。
- しかし、ジグソウの「ゲームのルール」に則っていたのか、それとも彼女の個人的な復讐だったのか?
- ここには、ジグソウの遺志の限界が見えている。
⑦ 結論:『SAW6』はシリーズ最大の後継者争いが描かれた作品
『SAW6』では、ジグソウの後継者を巡る争いが、単なる「ゲーム」ではなく、権力と生存のための戦いへと変貌している。
- ホフマンはFBIの追及をかわし、ゲームを続けるが、最終的にジルによって罠にかけられる。
- FBIはついにホフマンの正体に気づくが、全員殺害されるという衝撃的な展開。
- ジグソウの遺志を継ぐ者は誰なのか? その答えは、もはや純粋な哲学ではなく、個々の生存戦略に委ねられる。
この作品をもって、ジグソウの遺志は完全に変質し、
『SAW7(ファイナル)』でシリーズのクライマックスを迎えることとなる。
『SAW6』の評価とファンの反応

『SAW6』は、シリーズ第6作目として2009年に公開されました。本作は、保険業界への批判や社会風刺を取り入れたストーリーが特徴的で、多くのファンや批評家から注目を集めました。以下に、映画の評価やファンの反応をまとめます。
① 評価概要
- 映画.com:23件のレビューで平均評価は3.3。 映画.com
- Filmarks:ユーザーから「初めの夫婦人肉天秤ゲームが狂気じみてて最高」との感想が寄せられています。 フィルマークス
- みんなのシネマレビュー:「ホフマンがセス殺しの犯人だと気付かれ、一気に3人を殺すスピードはすごかった」とのコメントがあります。 JTNews
② ファンの反応
- 社会風刺の評価:保険業界への批判を取り入れたストーリーが新鮮であるとの声が多く、特に保険金支払い拒否に関するテーマが注目されています。 楽天広場
- トラップの過激さ:シリーズ中でも特に過激でエグいトラップが登場し、ファンからは「冒頭からエグいですねぇ。今回もかなりのグロ・エグです」との感想が寄せられています。 ムービーウォーカー
- ストーリーの進行:前作『SAW5』が物足りなかったと感じたファンからは、本作について「初見、率直な感想はまずまず楽しめた」との意見も見られます。 saw-world.cocolog-nifty.com
③ 総評
『SAW6』は、シリーズの中でも社会的テーマを強く打ち出した作品として評価されています。一方で、過激なトラップ描写やグロテスクなシーンが多いため、苦手な方には注意が必要です。全体的には、シリーズファンから高い評価を受けており、特に社会風刺やストーリーの深みを楽しむ方にはおすすめの作品です。
さらに詳しい感想やレビューをお求めの方は、以下の動画も参考にしてみてください。
まとめ:『SAW6』が伝えたかったメッセージとは?

『SAW6』は、シリーズの中でも特に社会的なテーマを色濃く反映した作品であり、単なるスプラッター映画ではなく、深いメッセージを含んでいる。
ここでは、本作が伝えたかったメッセージを振り返り、その意義を考察する。
① 「命の価値を誰が決めるのか?」
本作では、保険業界を舞台に「選別される命」というテーマが強調されている。
主人公ウィリアム・イーストンは、「統計に基づいて生存可能性が低い人間を切り捨てる」システムを作ったが、彼自身がジグソウのゲームで「選ばれる側」に追い込まれる。
映画が投げかけた問い:
- 保険会社が契約者の生死を決めることは許されるのか?
- 人の命に優先順位をつけることは正しいのか?
- もし自分が「見捨てられる側」になったら、どう思うか?
ジグソウのゲームを通じて、映画は「命の価値は統計で決められるものではない」というメッセージを提示している。
② 「選択の自由とその責任」
ジグソウの哲学の根幹には、「人間には常に選択肢があり、それに伴う責任がある」という考えがある。
『SAW6』では、特にこのテーマが強調されている。
- ウィリアムは、これまで他人の生死を「合理的な基準」で決めてきたが、
今度は自分が「選択される側」になることで、その責任を負わされる。 - ジル・タックは、ジョン・クレイマーの遺言に従いホフマンを罠にかけるが、
彼女の選択はジグソウの哲学に則ったものなのか、それとも復讐なのか?
映画を通じて、「人は本当に自由に選択できるのか? その選択にはどんな責任が伴うのか?」という深い問いが投げかけられている。
③ 「復讐の連鎖と後継者の変質」
『SAW6』では、ジグソウの後継者であるホフマンと、ジョンの元妻ジル・タックの対立が描かれる。
この対立は、単なる権力争いではなく、ジグソウの哲学がどのように変質していくかを示している。
| ジグソウ(ジョン・クレイマー) | ホフマン(後継者) |
|---|---|
| ゲームは「試練」であり、乗り越えれば生きるチャンスを与える | ゲームは「処刑」であり、復讐の手段として利用される |
| 罰ではなく、気づきを与える | 自己保身のために罠を仕掛ける |
| 道徳的な試練を重視 | 感情的で個人的な殺人に傾倒 |
ジグソウの哲学がホフマンによって歪められていく様子が、本作の大きなテーマの一つとなっている。
④ 『SAW6』がシリーズの中で果たした役割
『SAW6』は、シリーズの中で重要な転換点となった作品である。
✅ 社会風刺を本格的に導入した作品
- これまでの作品は個人の罪をテーマにしていたが、本作では企業や社会システムの問題を指摘している。
✅ 後継者争いが本格化
- ジグソウの遺志を継ぐ者は誰なのか? ホフマン vs. ジル・タックの対決がクライマックスを迎える。
✅ シリーズのクライマックスへの布石
- ホフマンが追い詰められ、次作『SAW7(ファイナル)』へとつながる重要な展開。
⑤ まとめ:『SAW6』が伝えたかったこと
『SAW6』は、単なるホラー映画ではなく、
現実社会の問題を映し出す鏡のような作品である。
- 命の価値は誰が決めるのか? → 保険業界の問題を通じて、生命の選別というテーマを問いかける。
- 選択には責任が伴う → ゲームの参加者は、決断を迫られ、その選択の重さを痛感する。
- ジグソウの哲学の変質 → 後継者争いが激化し、本来の理念が歪んでいく。
- 復讐の連鎖 → ホフマン、ジル、それぞれの立場で異なる正義が描かれる。
『SAW6』は、シリーズの中でも特に「考えさせられる作品」
- 社会問題とホラーを融合させた異色作
- ジグソウの哲学の核心に迫るストーリー
- シリーズの転換点として、最終章に向けた布石を打つ作品
『SAW6』は、単なる恐怖だけでなく、
「もし自分がこのゲームに巻き込まれたら?」
「選ぶ側から、選ばれる側になったら?」
といった深いテーマを観客に問いかける作品である。
あなたは、この映画のメッセージをどう受け取るだろうか?



















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