映画『Spree/スプリー』とは?作品概要と基本情報

『Spree/スプリー』は、2020年に製作されたアメリカのスリラー映画で、SNS時代の闇と承認欲求の暴走を鋭く描いた衝撃作です。主演はNetflixの大ヒットドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でスティーブ役を演じたジョー・キーリー。ライドシェアアプリのドライバーが、フォロワーを増やすために恐ろしい計画を実行するという、現代社会ならではの題材が話題を呼びました。
公開年・監督・キャスト紹介
- 公開年:2020年(アメリカ)、2021年4月23日(日本公開)
- 監督:ユージーン・コトリャレンコ(Eugene Kotlyarenko)
- 主演:ジョー・キーリー(Joe Keery)
- 共演:サシーア・ザメイタ、デビッド・アークエット、ミーシャ・バートン、ララ・ケント、フランキー・グランデ ほか
- 上映時間:93分
- 配給:OSOREZONE
原題「Spree」の意味と日本公開時の注目度
原題の「Spree」は、「衝動的な行動」や「無茶な連続行為」を意味します。劇中では、主人公カートが“フォロワー獲得”という目的のために突き進む危険なライブ配信を象徴するタイトルとなっています。
日本公開時には、SNSの中毒性やインフルエンサー文化への風刺として注目され、特に若年層やネット文化に敏感な観客から強い反響を得ました。また、全編にわたりライブ配信風の映像演出を多用した斬新なスタイルも、批評家や映画ファンの間で話題となりました。
あらすじ(ネタバレなし)|SNS時代の新感覚スリラー
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『Spree/スプリー』は、SNSでの「バズり」に執着する若者を主人公に据えた、現代的でスリリングな物語です。物語の舞台は、私たちが日常的に利用するライドシェアサービスとライブ配信アプリ。誰もがスマホで世界と繋がれる時代の光と影を、予想外の角度から描き出します。
主人公カート・カンクルの目的
主人公カート・カンクルは、フォロワー数が伸び悩む無名のライドシェアドライバー。彼の夢は「SNSで一躍有名人になること」。しかし、日々の投稿ではほとんど反応がなく、知名度ゼロの現状に焦りを募らせていきます。そんな彼が思いついたのは、常識を超える危険な方法で視聴者の注目を集めることでした。
“配信殺人”という衝撃的な設定
カートが実行に移したのは、乗客を乗せた車内でのライブ配信。そこで行われる行為は、誰も予想できないほどの危険で、そして現実離れした衝撃的なものでした。
「現実とネットの境界線はどこにあるのか?」——この問いを突きつけながら、物語は息を呑む緊張感と共に展開していきます。
本作は単なるスリラーではなく、SNS依存や承認欲求の暴走といった現代の社会問題をエンタメとして描き出した、新感覚のサスペンス体験です。

“配信殺人”…ありえないと思うかい? でも今この瞬間、誰かが配信している映像に…映り込んでいるかもしれない。
ネタバレあり詳細解説|暴走するフォロワー至上主義

※ここから先はネタバレを含みます。『Spree/スプリー』は“バズるためなら何でもやる”主人公カートの視点で、承認欲求がどこまで人を壊すのかを描き切ります。SNSライブ配信のUIやスマホ縦画面を大胆に取り入れた「擬似・同時体験」型の語り口が、観客を“視聴者の一人”へと巻き込みます。
物語前半:SNSバズりへの執念
無名配信者のカート・カンクルは、ライドシェア車両に複数カメラを仕込み、配信企画「#TheLesson(有名になる方法)」を開始。乗客に渡す“特製ウォーター”で次々と命を奪う過激配信に踏み出します。ところが視聴数は伸びず、人気配信者ボビーの反応も「フェイク扱い」。やがてカートはコメディアンのジェシー・アダムズを乗せるも、彼女には一蹴され、焦燥と嫉妬を募らせていきます。
中盤:配信殺人のエスカレート
注目を渇望するカートは暴走を強め、過激化する配信の最中に人気者ボビーの自宅へ。コラボを装いつつもついに殺害へと至り、ストリームは不気味な盛り上がりを見せ始めます。警察の包囲や渋滞、視聴者の煽動がカートをさらに追い込み、ライドシェアは一時停止に。ジェシーは舞台上で「承認欲求への痛烈な批判」をぶつけスマホを叩き割りますが、その後、別の配車アプリでカートの車に乗り込んでしまいます。
終盤:カートの末路と衝撃のラスト
ジェシーは充電ケーブルで抵抗し車ごとカートの自宅へ突っ込みます。そこではカートが出発前に母親を手にかけていた事実が露わに。駆けつけた父クリスは状況を理解できぬままカートに射殺され、乱戦の末、ジェシーが車でカートを壁に押しつけて動きを封じ、彼のスマホでとどめを刺します。事件は爆発的に拡散し、ジェシーは“生存者”として脚光を浴びる一方、ネットの暗部ではカートを英雄視する歪んだ称賛が渦巻き続けます。
――「バズ」は一瞬、アーカイブは永遠。 本作は、無関与な「観客」も暴力の循環に加担してしまう危うさを、徹底したライブ配信的語りで刻みつけます。

観客は無責任に笑い、数字だけが狂気を膨らませる。ねえ、もし君がその場で“視聴者”だったら…止められただろうか?
キャラクター解説と役者陣の魅力

『Spree/スプリー』の魅力は、SNS時代の闇を描くストーリーだけでなく、個性豊かなキャラクターとそれを演じる役者陣の熱演にもあります。主演のジョー・キーリーを筆頭に、コメディと緊張感を巧みに行き来するキャストが物語に厚みを与えています。
カート役ジョー・キーリーの狂気的演技
主人公カート・カンクルを演じるのは、Netflixの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』でお馴染みのジョー・キーリー。本作では、優しい好青年のイメージを覆し、笑顔の裏に狂気を潜ませた配信殺人者を熱演。
ライブ配信中のテンションの高さや、視聴者数に一喜一憂する表情の変化は圧巻で、観客に“本当に危ない人物”と錯覚させるほどのリアリティを生み出しています。
コメディアン役サシーア・ザメイタの存在感
カートに立ちはだかるコメディアン、ジェシー・アダムズを演じるのは『サタデー・ナイト・ライブ』出身のサシーア・ザメイタ。
彼女はコメディアンらしい軽妙な掛け合いと、命を懸けたサバイバルシーンの緊迫感を両立させ、物語にユーモアとスリルの絶妙なバランスをもたらします。
脇を固める豪華キャスト(デビッド・アークエットほか)
カートの父クリスを演じるデビッド・アークエットは、『スクリーム』シリーズで知られるベテラン俳優。父親としての情けなさや弱さを繊細に表現し、カートの背景に説得力を持たせています。
さらに、ミーシャ・バートンやララ・ケント、フランキー・グランデなど、多彩な面々が出演し、SNS文化の縮図のような世界観を完成させています。

笑顔と狂気は紙一重。ジョー・キーリーの目を見てごらん…そこには虚ろな渇望が潜んでいる。
テーマ考察|『Spree』が映すSNS依存と承認欲求の闇

『Spree/スプリー』は単なるスリラー映画ではなく、現代社会に深く根付いたSNS依存と承認欲求の危うさを鋭く描き出しています。スマートフォン一つで世界中に繋がれる時代において、「注目されたい」という欲求がどこまで人を追い詰めるのか──その末路を映し出す本作は、SNS文化を生きる私たち自身への警鐘とも言えます。
なぜカートは“殺人配信”を始めたのか
主人公カート・カンクルは、幼少期から他者の承認を求め続け、SNSを通じて有名になることを夢見ていました。しかし現実は厳しく、どれだけ投稿してもフォロワー数は伸びず、反応は冷ややか。そんな行き詰まりの中で彼が選んだのは、“極端で過激な行動”による注目獲得でした。
彼にとって配信殺人は、犯罪というよりも「究極のコンテンツ制作」であり、倫理よりもバズることが最優先だったのです。
現代のSNS文化とのリンク
カートの行動は、実際のSNS文化と無関係ではありません。本作では、ライブ配信のUIや視聴者コメントがリアルタイムで映し出され、視聴者の「いいね」や「シェア」が彼の行動を助長していく様子が描かれます。
炎上を恐れつつも過激なコンテンツに惹かれてしまう視聴者心理や、配信者と視聴者の共犯関係は、現実のインターネットでも日常的に見られる構造です。
承認欲求がもたらす破滅
カートの暴走は、承認欲求が制御を失ったときの最悪のシナリオです。フォロワー数や再生回数が自己価値の全てとなり、現実の人間関係や倫理観は後回しにされます。
『Spree』はその危うさを、笑顔と狂気が同居する主人公を通して表現し、「誰もがカートになり得る」という不気味なリアリティを突きつけます。
本作を通して浮かび上がるのは、SNSの中毒性と、それに伴う承認欲求の果て。スクリーン越しの物語でありながら、私たちのすぐ隣にある現実の一部として心に残ります。

いいねが欲しい…フォロワーが欲しい…その気持ち、誰だってあるだろう? 君も、すでにカートの影に取り憑かれているのかもしれない。
撮影手法と映像演出の特徴

『Spree/スプリー』は、ストーリーだけでなく、映像表現の面でも非常にユニークな試みが詰まっています。本作は全編を通してSNSのライブ配信やスマートフォン視点を意識した映像スタイルを採用し、観客をまるで“配信の視聴者”にしてしまうような没入感を生み出しています。
ライブ配信風カメラワークの臨場感
劇中のほとんどのシーンは、ライドシェア車両内やカートの持つスマホカメラ、ダッシュカムなどを通して映し出されます。このカメラワークにより、観客はまるでリアルタイムで事件を目撃しているかのような臨場感を味わうことができます。カメラの揺れや画質の荒ささえも、配信らしさを演出する重要な要素になっています。
POV(主観視点)を多用する理由
本作ではPOV(Point of View=主観視点)を多用し、観客にカートや乗客の視点を直接体験させます。これにより、ただの傍観者ではなく“配信に参加している感覚”が強まり、ストーリーの緊張感や恐怖がダイレクトに伝わります。この手法は、SNS配信の双方向性を映像的に再現する効果も持っています。
SNS画面と現実の融合演出
画面上にはリアルタイムで流れるコメントや「いいね」数、視聴者の反応が映し出され、現実のSNS配信と変わらない情報量が展開されます。コメント欄の動きや数字の増減は、カートの感情や行動に直接影響を与え、物語の一部として機能します。これにより、SNSというバーチャル空間と現実の惨劇がシームレスに融合し、観客はさらに深く物語世界に引き込まれます。

ライブ配信のカメラはすべてを映す。君の無防備な顔も、夜の窓に映る“誰か”の影も…。
似ているテーマの映画・ドラマ作品との比較

『Spree/スプリー』は、SNSやインターネット文化を背景に描かれるスリラー作品の中でも、特にライブ配信という現代的な要素を全面に押し出しています。本作をより深く楽しむためには、同様のテーマを扱った他作品との比較が有効です。ここでは、ネット時代を反映したホラーやスリラー映画との共通点や相違点を紹介します。
『キャンディマン』『ザ・デン』などネット時代のホラー
『キャンディマン』(2021)は、SNSで名前を呼ぶことで怪異が呼び出されるという現代的アレンジを加えたリブート版ホラー。一方、『ザ・デン』(2013)は、チャットサービスを通じて連鎖的に恐怖が広がるネットスリラーです。
『Spree』もまた、デジタル社会における匿名性と拡散性が恐怖を増幅させる点で共通しており、「ネット空間の行為が現実の惨劇に直結する」という構造を持っています。
『ナイトクローラー』との共通点
『ナイトクローラー』(2014)は、スクープ映像を求めて事件現場に先回りする映像ジャーナリストを描いた作品です。主人公が倫理を踏み越え、より過激な映像を求めて暴走する姿は、『Spree』のカートと重なります。両作とも、「視聴者の注目こそが行動の原動力」という危険な価値観を描き、メディア消費とモラル崩壊の関係性を鋭く批判しています。
関連記事リンク集(後記予定)
- 『ザ・デン』徹底解説|ネットに潜む見えない恐怖
- 『キャンディマン』(2021)レビュー|SNSが呼び出す都市伝説の怪異
- 『ナイトクローラー』完全考察|スクープ至上主義の闇
- SNS時代のおすすめホラー映画10選
関連記事を合わせて読むことで、ネット社会を背景にしたホラーやスリラーの系譜を立体的に理解でき、『Spree』の魅力をさらに深く味わえます。

ネットを通して忍び寄る恐怖は、どの作品にも共通する。けれど『Spree』は…もっと身近に、もっと日常に潜んでいる。
観る前に知っておきたいポイント(鑑賞ガイド)
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『Spree/スプリー』は、SNS時代を背景にした刺激的なスリラー作品です。視聴前にいくつかのポイントを押さえておくことで、作品世界により深く入り込み、テーマや演出の意図を理解しやすくなります。ここでは、鑑賞の参考になる情報をまとめました。
暴力描写の有無と年齢制限
本作には殺人シーンや血液描写など、暴力的な表現が含まれています。ただしホラー作品としては比較的グロテスクな描写は控えめで、演出はブラックユーモアや風刺の要素も強めです。
日本でのレーティングはGですが、テーマや内容は成人層向けであり、未成年の鑑賞には保護者の助言が推奨されます。
英語版と日本語版の違い
オリジナルの英語版は、SNS配信やコメント欄のセリフがリアルなネットスラングや略語で構成されており、現代的なテンポ感が特徴です。日本語吹替版では、これらのニュアンスを日本の視聴者に伝わる表現にローカライズ。字幕版はオリジナルの雰囲気を残しつつ意味を補完しているため、より現地感を味わいたい方には字幕版がおすすめです。
SNSや配信文化に馴染みがない人への補足
作品内には、ライブ配信のUIやチャットコメント、視聴者数の増減など、SNS文化に慣れていないと理解しにくい要素があります。
基本的な理解ポイントとしては、「視聴者の反応や数字が主人公の行動原理に直結する」という構造を押さえると、物語の緊張感や皮肉がより伝わります。
これらの事前知識を踏まえて観れば、『Spree/スプリー』の風刺性や臨場感を最大限に楽しむことができます。

心の準備をしておくんだ。観終わったあと…SNSを開くのが、怖くなるかもしれないからね。
感想・レビューまとめ(賛否両論ポイント)
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『Spree/スプリー』は、その過激なテーマと斬新な演出により、海外と日本で評価が分かれる作品です。ここでは、両国の反応の違いや、賛否を呼んだポイントを整理し、どのような層に刺さる作品なのかを分析します。
海外と日本の評価の違い
海外では、特にSNS文化が生活に密着している若年層を中心に「現代社会への鋭い風刺」として高く評価されました。Rotten Tomatoesなどのレビューサイトでも、斬新なカメラワークやブラックコメディとしての側面が支持されています。
一方、日本ではテーマの風刺性よりも、暴力描写や主人公の倫理観の欠如に注目が集まり、「後味の悪さ」や「共感できないキャラクター像」が低評価の要因になることもありました。
高評価の理由
- ライブ配信風の映像表現が新鮮で没入感が高い
- ジョー・キーリーの演技力と狂気の表現が圧巻
- SNS依存や承認欲求をテーマにした社会風刺が刺さる
- ブラックユーモアとスリラー要素の絶妙な融合
低評価の理由
- 主人公カートに全く共感できないストーリー構成
- 暴力的な展開や倫理的な不快感が強い
- ストーリーのリアリティが薄く、設定が極端すぎる
- 配信文化やネットスラングに馴染みがないと理解しにくい
総じて、『Spree/スプリー』は「テーマや演出の新しさ」を評価する層と、「共感性や物語性の欠如」に不満を持つ層がはっきり分かれる作品です。SNSやネットカルチャーに敏感な人ほど楽しめる一方で、価値観や感性によっては拒否反応を示す場合もあり、この二極化こそが本作の特徴とも言えます。

賛否が分かれるのは当然さ。なぜなら…この映画は鏡だから。君の中にある闇を、そのまま映し出すんだ。
まとめ|『Spree/スプリー』が残すSNS時代の警鐘

『Spree/スプリー』は、SNSという現代的なプラットフォームを舞台に、承認欲求の暴走とそれがもたらす破滅を描いたスリラー作品です。ライブ配信風の演出やPOV視点を駆使し、観客を“事件の視聴者”として巻き込む構造は、単なる娯楽を超えて強い社会的メッセージを放っています。
現代社会へのメッセージ性
本作が突きつけるのは、「注目されることが自己価値のすべてになったとき、人はどこまで行ってしまうのか」という問いです。
SNSは世界中と瞬時に繋がる力を持つ一方で、数字や反応が行動基準になりやすいという危うさも孕んでいます。カートの暴走は極端な例ですが、承認欲求に翻弄される構造は私たちの日常にも潜んでいます。本作はその現実を、フィクションを通して鋭く可視化しています。
次のおすすめ作品案内(後記予定)
- 『ザ・デン』徹底解説|ネットに潜む見えない恐怖
- 『ナイトクローラー』完全考察|スクープ至上主義の闇
- 『CAM/キャム』レビュー|SNSと自己同一性の危機
- SNS時代のおすすめホラー映画10選
これらの作品も『Spree』同様、ネット社会やメディア環境の裏側に潜む人間心理を描いた内容です。続けて視聴・考察することで、現代スリラーの系譜とテーマの深さをより広く理解できます。
――バズは一瞬、記録は永遠。本作はその言葉を体現し、私たちにSNS時代の危うさを忘れさせない警鐘となります。

忘れるな。バズは一瞬、記録は永遠。今日もどこかで“君を監視する目”が光っている…。
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ふふ…ただのスリラーだと思ったら大間違い。君のスマホの中でも、同じ狂気が生まれているかもしれないよ…。